novel_3

☆死と同義の表現、少々えっちな表現などあるので注意です。苦手な方はさっさとブラウザバック。





↓OKな方はすくろーるっ↓


































































なこの吸血事情

そういえば僕は、どうしてわざわざ経口で直接吸うことで血を摂取しているんだろう。
別に輸血でもいいわけだし、他にも摂取するだけなら様々な方法がある。
なのになんで……

他の方法のひとつとして輸血を試すことにした。
けど、ダメみたいだった。
僕は輸血を受けた数時間後――前回の吸血からおよそ38時間後、倒れた。

自室の棺の中で、僕はぼんやりと目を覚ました。
視界が歪んでいて、貧血で倒れてから目を覚ましたのと同じような感覚だ。
お腹、空いたな。
お姉ちゃんに起こしてもらって、ひとまず水を一杯飲む。
「……なこ……」
「ん……お姉ちゃん」
言わなくてもわかってた。
輸血じゃダメだったこと。
そのせいで倒れてしまったこと。
……すごく、体が重い。
半ば、寄り添ってくれるお姉ちゃんに身体をあずけるようにしながら、水のおかわりをもらってもう一口ほど飲む。
そういえば、引きこもり時代作曲に夢中になって朝昼晩全部すっぽかしたことあったけど、その時も似たような感じになったな。流石に心配されて、鍵開け職人呼ばれた挙句病院に運ばれたけど。
血、本当に吸わなきゃいけないのかな。鉄の味がほとんどで、もう嫌なんだけどな。
「……なこ」
「……、なに」
声を出すのも、億劫になってきた。
「私の血、吸って」
「え……」
お姉ちゃんは僕の返事が帰ってくるのも待たずに、メスを手に取り、自分の手首を切ってしまった。
「……!」
動脈も静脈も両方切ってしまったらしく、ものすごい量の血が溢れる。
「まって、お、ねえちゃ、」
「……なこ」
お姉ちゃんはそのまま僕を押し倒して、切った手首を僕の口に押し付けてきた。
「う、ぅぐっ、」
「……」
僕は、身体をろくに動かせないから抵抗できなくて、むせ返る。
「ぅ、げほっ、っぐ!」
そのまま窒息しそうになって、必死に鉄の味のする液体を飲み込む。
お姉ちゃんもお姉ちゃんで急激に血が抜けたからか、力がだんだん緩くなっていく。
と、そこにやってきた使用人さんが、その様子を見て驚いたらしい、すぐにバタバタと出て行ったかと思ったら救急箱を持ってきた。
「四琴お嬢様!?」
他にもぞろぞろと何人もの使用人が入ってきて、気づけば一気に騒がしくなっていた。
「ぅ……」
お姉ちゃんは、そんな中で意識を失った。

いつのまにか眠っていたらしい。
いつもどおりの棺のベルベットのふかふかした感触を頬に感じる。
口の周りについていたはずの血が乾いたかぴかぴとした感触がない。おそらく使用人さんたちのうちの誰かが拭いてくれたんだろう。
身体の重さだるさも、普段の寝起きとそう変わらない程度しかなくなっていた。
サイドテーブルの上にあるコップから水を飲んで、起き上がる。
「……ぁ」
そして気づく。
「お姉ちゃんっ……!」
水で寝起きの気だるさも完全に吹き飛んだ僕は、ドアを大きく開け放ち、お姉ちゃんを探しに走る。

「お姉ちゃんっ!」
お姉ちゃんの部屋のドアを開け放った。
お姉ちゃんはベッドの上で眠っていた。輸血のパックが、ドアを開けた時の風で揺れている。
「っ、はぁっ、はぁっ……」
肩で息をしながら、僕はお姉ちゃんに近づく。
と、ドアを開けた音で目を覚ましてしまったのか、お姉ちゃんが僕の方を見た。
「なこ……?もう、大丈夫なの?」
「僕はね……でも、お姉ちゃんは……」
お姉ちゃんの手首には包帯が巻いてあり、顔色はまさに蒼白といった感じだった。
「……なこ」
「なに?」
「あの人に聞いたの。なこがお腹いっぱいになるまで私の血を吸い尽くせば、私となこはずっと、永遠に一緒だって」
「……」
僕は、悪い予感を感じて、背中がぞわりとした。
お姉ちゃんは、僕の手をとって、頼りない仕草で自分の方に引き寄せる。
「だからね……私の血を、吸い尽くして。そして、ずっと一緒にいて」
「……、でも」
「なことずっと一緒にいたいの」
僕はその言葉に負けて、ポケットからメスを取り出した。
輸血の点滴をそっとその手の甲から外し、ワンピース型の寝巻きを大きくめくり上げて、いつものように太腿に傷をつけた。
赤い色が、その白い太腿から静かに流れ出す。
ちょうどお腹が空いていたし、悪くないタイミングだったのかもしれない。
その赤に、僕は口をつけた。

ゆっくりと時間をかけて、僕は吸えるだけを吸い尽くした。
「……、」
お姉ちゃんの顔は、血の気がほとんどない白になっていた。瞳も心なしか昏くなっている。
鉄の味が未だに口や喉を支配する。
丁寧に太腿の傷を拭って、ガーゼを当てた上から包帯を巻いて傷口を保護する。
一口だけ水を飲んで、僕はそっと、血が抜けて冷たくなったお姉ちゃんの唇にキスをする。
「これで、ずっと一緒……」
お姉ちゃんを抱きしめると、ほんの少しだけぬくもりが戻ってきた。
僕のぬくもりとお姉ちゃんのぬくもりで、世界がまた色づいていく。
ゆっくりと、本当にゆっくりと、音楽のクレッシェンドのように、お姉ちゃんの心音がまた聞こえ出す。
光の戻った瞳が、僕を優しく見つめる。
「なこ……」
「……お姉ちゃんっ……!」
お姉ちゃんの胸に顔を押し付けて、僕は思わず涙を浮かべる。
他人から見ればバッドエンドにも見えるのかもしれないけれど、これは僕達にとってはある意味最高の始まり方なのかもしれない。
「お姉ちゃん……、だいすき……」
「なこ……」
お姉ちゃんの手が僕の頭を優しく撫でてくれる。
「私も大好きだよ、なこ……」
その温かい手が、僕の頭を優しく撫でてくれる、もうそれだけでよかった。






end...?


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  • 最終更新:2016-04-17 13:21:39

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